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SQL Server 2014 実践シリーズ (HTML 版)
「No.1 インメモリ OLTP 機能の実践的な利用方法」

松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2014 実践シリーズの「No.1 インメモリ OLTP 機能の実践的な利用方法」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。[2015年12月29日]

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2.8 INSERT ステートメントの具体的な性能向上例

INSERT ステートメントは、「トランザクション テーブル」と「顧客利用履歴テーブル」への挿入があります。

00106

◆ INSERT ステートメントは 1.4~4.6倍の性能向上

INSERT ステートメントは、ネイティブ コンパイル SP 化することで、27~78%の性能向上1.4~4.6倍の性能向上)を実現できることが分かりました。

どちらのテーブルも、SCHEMA_AND_DATA(データの永続化有り)に設定していますが、顧客利用履歴テーブルへの INSERT は、若干のタイムラグ(遅延)が許される状況だったので、Delayed Durability(遅延書き込み/非同期書き込み)を採用しました。これによって、大きな性能向上(4.6倍もの性能向上)を実現することができ、Delayed Durability の強力さを確認することができました。

これに対して、トランザクション テーブルへの INSERT は、ログへの通常書き込みがある分、1.4倍の性能向上に留まりました。UPDATE ステートメントが 1.2~1.3倍の性能向上であったことを考えると、SCHEMA_AND_DATA の場合に、ネイティブ コンパイル SP 化することによって、1.2~1.4倍程度の性能向上(シングル実行)が期待できるのでは、と考えることができそうです。

◆ トランザクション テーブルへの INSERT

トランザクション テーブルへの INSERT は、次のように行っています。

INSERT INTO トランザクションテーブル (col2col3col4…(29列分の列名))
 VALUES(@p1@p2@p3…(29列分のパラメーター) 

テーブルには、30個の列があり、IDENTITY(1,1) に設定された「Seq」列が PRIMARY KEYです。INSERT 時は、この列を除いた 29列へ値を指定して、挿入しています。この INSERT は、ネイティブ コンパイル SP 化することで、1.4倍の性能向上を確認することができました。ネイティブ コンパイル SP は、次のように作成しています。

CREATE PROC p_トランザクションテーブルへの挿入
@p1 データ型@p2 データ型@p2 データ型…(29列分のパラメーター)
WITH
   NATIVE_COMPILATIONEXECUTE AS OWNERSCHEMABINDING
AS
BEGIN ATOMIC
 WITH TRANSACTION ISOLATION LEVEL SNAPSHOTLANGUAGE N'japanese')
  INSERT INTO dbo.トランザクションテーブル(col2col3col4…(29列分の列名))
   VALUES(@p1@p2@p3…(29列分のパラメーター) )
  SELECT SCOPE_IDENTITY() AS ID値
END

このように、単純なデータの INSERT でも ネイティブ コンパイル SP を作成するだけで、シングル実行で 1.4倍の性能向上を実現することができました。

◆ SCOPE_IDENTITY での ID の取得をネイティブ コンパイル SP へ含める

今回、ネイティブ コンパイル SP 化するにあたって、SCOPE_IDENTITY() をストアド プロシージャの中に含めるように修正しています(今まではアプリケーションから SCOPE_IDENTITY を実行)。これを行わないと、IDENTITY によって生成された ID 値を取得できないからなのですが、これは次のような状況です。

00107

この動作は、通常のストアド プロシージャでも同様ですが、INSERT の実行後に、アプリケーションから SCOPE_IDENTITY を利用している場合には、ストアド プロシージャ化することによって値が取れなくなってしまうので、SCOPE_IDENTITY はネイティブ コンパイル SP の中に含めるように修正しなければなりません。

◆ 顧客利用履歴テーブルへの INSERT ~Delayed Durability~

顧客利用履歴テーブルへの INSERT は、次のようにネイティブ コンパイル SP を作成しています。

CREATE PROC p_顧客利用履歴への挿入
@p1 データ型@p2 データ型@p2 データ型…(23列分のパラメーター)
WITH
   NATIVE_COMPILATIONEXECUTE AS OWNERSCHEMABINDING
AS
BEGIN ATOMIC
 WITH DELAYED_DURABILITY ON,
        TRANSACTION ISOLATION LEVEL SNAPSHOTLANGUAGE N'japanese')
  INSERT INTO dbo.顧客利用履歴テーブル(col2col3col4…(23列分の列名))
   VALUES(@p1@p2@p3…(23列分のパラメーター) )
  SELECT SCOPE_IDENTITY() AS ID値
END

顧客利用履歴テーブルには、24個の列があり、IDENTITY(1,1) に設定された「Seq」列が PRIMARY KEYです。INSERT時は、この列を除いた 23列へ値を指定して、挿入を行っています。この INSERT を、ネイティブ コンパイル SP 化するときに、「DELAYED_DURABILITY = ON」を WITH 句で追加することによって、遅延書き込み(非同期でのログへの書き込み)を行えるになります。これによって、4.6倍もの性能向上を実現できています。

DELAYED_DURABILITY = ON を指定しない場合は、トランザクションのコミット時にログへの書き込みを行って、書き込みが完了したことがコミットと見なされて、データの損失は発生しませんが、DELAYED_DURABILITY = ON を指定した場合は、ログへの書き込みが完了するのを待たないで、コミットと見なします(ログへの書き込みは遅延で行います)。したがって、コミットしたにも関わらず、データの損失の可能性があります(コミット直後に電源断などが発生した場合にはデータの損失が起こり得ます)。その分、大幅な性能向上を実現できるというメリットを得られます。

顧客利用履歴テーブルは、ユーザーが直接参照するテーブルではなく、ユーザーの利用状況を分析するためのデータになるので、多少のデータ損失が許容できるものでした。そこで、Delayed Durability を採用して、性能向上のメリットを享受することができました。こうした多少のタイムラグが許されるテーブルは、意外と多いのではないでしょうか?

例えば、もともと一定の間隔(1分間隔など)でその瞬間のデータのみを保存する、といった処理の場合などです。これであれば、もともと間のデータを取得していないので、1分間隔であれば、最大1分分のデータは損失する可能性があるわけです。それを許容して(性能とのトレードオフで)システムの設計を行っているので、そういったテーブルでは、Delayed Durability を採用しても、もともとデータの損失の可能性があったものなので、何の問題もありません。

Delayed Durability は、大幅な性能向上を実現することができるので、利用できる場面がないかどうか、検討してみることを強くお勧めします。

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事例1

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