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SQL Server 2014 実践シリーズ (HTML 版)
「No.2 SQL Server 2014 への移行とアップグレードの実践」

松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2014 実践シリーズの「No.2 SQL Server 2014 への移行とアップグレードの実践」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。[2015年12月29日]

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4.12 Reporting Services の新規サーバーへのアップグレード

Reporting Services を新規サーバーへ完全複製して、その後 SQL Server 2014 へアップグレードする場合は、追加の手順が必要になります。ここではその作業を説明します。

◆ 旧マスターで暗号化キーをバックアップする

Reporting Services を新規サーバーへ完全複製するには、旧マスターで暗号化キーをバックアップしておく必要があります。暗号化キーのバックアップは、「Reporting Services 構成マネージャー」ツールを利用して、次のように[暗号化キー]ページから行います(画面は、SQL Server 2005 ですが、他のバージョンでもほとんど同じ操作で行えます)。

00335

このページでは、[バックアップ]をクリックして、[暗号化キーの情報]ダイアログが表示されたら、[パスワード]に任意のパスワードを設定し、[キー ファイル]にバックアップ先のファイル名を指定します(画面は C:\backup フォルダーの下に rs暗号化キー.snk というファイル名を指定)。ここで設定するパスワードは、複雑なパスワード(大文字・小文字と @などの特殊文字を入れたりするなど)を指定する必要があり、これを行っていない場合は、次のように失敗します。

00336

バックアップが成功した場合は、次のように表示されます。

00337

また、設定したパスワードは、新規サーバーで復元する際に必要になるので覚えておいてください。バックアップしたファイル(~.snk)は、新規サーバーからアクセス可能なファイル サーバーや USB HDD など持ち運び可能なメディアに保存します。

◆ ReportServer、ReportServerTempDB データベースのバックアップ

Reporting Services の実体(レポート本体や、レポートに関する各種の設定)は、SQL Server 上の ReportServer および ReportServerTempDB データベースです。

00338

このデータベース(.mdf/.ldf)は、既定では SQL Server のシステム データベースと同じ場所に作成されます(SQL Server 2005 の場合は以下のフォルダー)。

C:\Program Files\Microsoft SQL Server\MSSQL.1\MSSQL\Data

このフォルダーにある ReportServer の実体(ReportServer.mdfReportServer_log.ldf)と ReportServerTempDB データベースの実体(ReportServerTempDB.mdfReport ServerTempDB_log.ldf)をオフライン バックアップします(SQL Server サービスと Reporting Services サービスを停止した上で、ファイルをコピーします)。

この 2つのデータベースは、次のようにオンライン バックアップBACKUP ステートメント)でも取得しておくことを強くお勧めします(これは SQL Server を起動した状態で実行します)。

BACKUP DATABASE ReportServer
 TO DISK 'C:\backup\ReportServer_full.bak'
BACKUP DATABASE ReportServerTempDB
 TO DISK 'C:\backup\ReportServerTempDB_full.bak'
00339

もし、オフライン バックアップからの復元がうまくいかなかった場合には、このオンライン バックアップを利用して、復元を行うことができるので、取得しておくことをお勧めします(∵Reporting Services は、万が一のときでも、この ReportServer ReportServerTempDB のオンライン バックアップと暗号化キーのバックアップさえあれば、元の状態に戻すことができるからです。オンライン バックアップから復元手順については、次の章で説明しているので、以降の手順でどうしてもうまく復元できない場合には、こちらもご覧いただければと思います。次の章は、SQL Server 2014 での操作ですが、SQL Server 2005 でも同じような操作で復元できます)。

◆ Reporting Services インストール時の構成の有無

以降の操作は、SQL Server の Reporting Services をインストールするときに、次のように[既定の構成をインストールする]を選択した場合の操作手順になります。

00340

もし、[サーバーを構成せずにインストールする]を選択している場合は、Reporting Services 構成マネージャーでサーバーを構成をした後に、以降の手順を実施してください。

◆ 新規サーバーでのオフライン バックアップからの復元

旧マスター側で取得したオフライン バックアップは、SQL Server の他のシステム データベースと同様、ファイル コピー(上書きコピー)で復元します。この際、SQL Server サービスReporting Services サービスを停止しておくようにします。

00341

ファイルのコピーが完了したら、SQL Server サービスを起動した後に、Reporting Services サービスを起動します(ReportServer と ReportServerTempDB データベースを SQL Server に認識させた後に、Reporting Services サービスを起動します)。

サービス起動後は、Reporting Services がこれだけで完全復元されているわけではなく、レポート マネージャーhttp://localhost/Reports)やレポート サーバーhttp://localhost/ ReportServer)にアクセスしても、次のようにエラーになります。

00342

どちらも「初期化されていません」エラーが表示されます。初期化を行うには、「Reporting Services 構成マネージャー」を利用します。

◆ 初期化の実行(SQL Server 2005 の場合のみ)

この操作は、SQL Server 2005 の場合の操作で、SQL Server 2008 以降の場合はこの操作は不要です。SQL Server 2005 では、「Reporting Services 構成マネージャー」を起動すると、次のように表示されます。

00343

初期化がエラーになっていることを確認できます。

これを解消するために、次のように[初期化]ページを開きます。

00344

このページでは、[初期化済み]のチェックが付いているマシンを選択して、[削除]ボタンをクリックします(これは旧マスターで構成されたものなので、削除しておく必要があります)。

削除が完了したら、もうひとつのマシンも選択して、[削除]ボタンをクリックします

00345

削除後は、次のようにエラーが表示されますが、問題ありません。

00346

次に、マシンの一覧が「」になっていることを確認して、[初期化]ボタンをクリックします(もし空になっていない場合は、再度[削除]ボタンで削除を試みてください)。

00347

初期化が完了すると、次のように[初期化済み]のチェックが付いたマシンが追加されます。

00348

◆ 暗号化キーの復元

初期化が完了した後は、暗号化キーを復元することで、Reporting Services を旧マスターと同じ状態に戻すことができます。この操作は、SQL Server 2005 でも、SQL Server 2008 以降でも同様に行う必要があります。暗号化キーの復元は、次のように[暗号化キー]ページから行います。

00349

このページでは、[復元]ボタンをクリックして、[暗号化キーの情報]ダイアログが表示されたら、[パスワード]にバックアップ時に指定したパスワードを入力して、[キー ファイル]にバックアップした暗号化キー(.snk)を指定します。

◆ スケールアウト配置の設定(SQL Server 2008 以降の場合)

この作業は、SQL Server 2008 以降を利用している場合にのみ行って、SQL Server 2005 の場合は必要ありません。SQL Server 2008 以降を利用している場合は、[初期化]ページの代わりに、[スケールアウト配置]ページがあります。

00350

暗号化キーの復元が完了すると、このように 2台のサーバーが表示されて(復元前は空)、上に表示されるものが、古いサーバーになるので、これを選択して、[サーバーの削除]ボタンをクリックします。次のように確認ダイアログが表示されるので、[OK]ボタンをクリックして実行します。

00351

これで、数秒すると次のように 1台のサーバーのみになります。

00352

もし、1台のサーバーが残らずに、次のように 2台とも削除されてしまう場合は失敗です。

00353

この場合は、[サーバーの削除]ボタンをクリックしたときに選択したサーバーが間違っているので、もう一度、暗号化キーをバックアップから復元し、再度、[サーバーの削除]ボタンで、今度は違うサーバーを選択して、実行してみてください([スケールアウト配置]に 1台のみ表示されるようになるまで実行してみてください)。

◆ 電子メールの設定

Reporting Services の電子メールの設定に関しては、手動で再設定をする必要があります(以下の画面は SQL Server 2005 ですが、他のバージョンでも同様です)。

00354

電子メールの設定は、「rsreportserver.config」ファイルに格納されているので、これは手動で再設定する必要があります。なお、このファイルは、SQL Server 2005 の場合は、既定で次のフォルダーに作成されています。

C:\Program Files\Microsoft SQL Server\MSSQL.3\Reporting Services\ReportServer

SQL Server 2008 以降の場合は、既定は次のフォルダーになります。

SQL Server 2008
C:\Program Files\Microsoft SQL Server\ MSRS10.MSSQLSERVER\Reporting Services\ReportServer

SQL Server 2008 R2
C:\Program Files\Microsoft SQL Server\ MSRS10_50.MSSQLSERVER\Reporting Services\ReportServer

SQL Server 2012
C:\Program Files\Microsoft SQL Server\ MSRS11.MSSQLSERVER\Reporting Services\ReportServer

以上で、作業が完了です。これで旧マスターと同じようにレポートを参照できるようになります。もしうまく復元できない場合は、次の章で説明するオンライン バックアップからの復元手順を試してみてください。

以前と同じようにレポートが参照できるようになる 00355

これで、SQL Server 2014 へアップグレードする準備ができました。SQL Server 2014 へのアップグレード方法については、前の章を参照してください。

◆ 追加手順のまとめ

行った作業をまとめると、次のようになります。

  • 旧マスターで、Reporting Services 構成マネージャーで暗号化キーをバックアップする
  • 旧マスターで ReportServer ReportServerTempDB データベースのオフライン バックアップを取得する(SQL Server サービスと Reporting Services サービスを停止した上で、ファイルをコピーする)
  • 万が一のときのために、ReportServer ReportServerTempDB データベースのオンライン バックアップを取得しておく(SQL Server サービスを起動している状態で、BACKUP ステートメントを実行する)
  • 新マスターで、SQL Server サービスと Reporting Services サービスを停止した上で、オフライン バックアップを復元する(ファイルの上書きコピー)
  • 復元後、SQL Server サービスを起動した後に、Reporting Services サービスを起動する
  • サービスが起動したら、Reporting Services 構成マネージャーで初期化を実行する(SQL Server 2005 の場合のみ)
  • 暗号化キーを復元する
  • SQL Server 2008 以降の場合のみ、スケールアウト配置で余計なサーバーを削除する
  • 電子メールの設定を再設定する
  • SQL Server 2014 へのアップグレードを実施する(第3章の 3.24 を参照)

◆ Windows のローカル ユーザーを利用している場合の注意点

新規サーバーへの複製後の注意点としては、レポートのセキュリティ設定Windows のローカル ユーザーを利用している場合です。これは、次のような状況です。

00356

Windows のローカル ユーザーの場合は、マシン(OS)が変わったとすると、同じ名前のユーザーを作成したとしても、内部的な SIDSecurity ID)が異なってしまうので、Reporting Services にとっては、認識できないユーザーとなってしまいます。このため、新規サーバーでは、Windows のローカル ユーザーが全く表示されない形になります。

これを回避する方法はないので、Windows のローカル ユーザーを利用している場合は、再設定をする必要があります。これは、あくまでも Windows のローカル ユーザーを利用している場合のみの話しで、Active Directory ドメインのユーザーであれば問題なく複製されている(復元できている)ので、再設定をする必要はありません。

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