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SQL Server 2014 実践シリーズ (HTML 版)
「No.2 SQL Server 2014 への移行とアップグレードの実践」

松本美穂と松本崇博が執筆した SQL Server 2014 実践シリーズの「No.2 SQL Server 2014 への移行とアップグレードの実践」の HTML 版です。 日本マイクロソフトさんの Web サイトで Word または PDF 形式でダウンロードできますが、今回、HTML 版として公開する許可をいただきましたので、ここに掲載いたします。[2015年12月29日]

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4.10 ケース2「新規サーバーへのアップグレード」のまとめ

ケース 2 での操作手順をまとめると、次のようになります。

00323

1.現在のマスター環境丸ごと新規サーバーへ複製する

 - 現在のマスターでオフライン バックアップ(全データベース)を取得する
  (ユーザー データベースに関しては、オンライン バックアップでも可)
 - 現在のマスターを停止して、ネットワークから切り離す(旧マスターとなる)
 - 新規サーバーOS をインストールし、マシン名を旧マスターと同じ名前へ変更する
  (インストールする OS は、旧マスターと異なるものでも可)
 - 新規サーバーActive Directoryドメインへ参加させる
 - 新規サーバーへ旧マスターと同じバージョンの SQL Server をインストールする
 - 旧マスターの SQL Server にインストール済みの修正プログラムを、新規サーバーにもインストールする
 - 新規サーバーの SQL Server を停止する
 - 旧マスターで取得したオフライン バックアップを上書きコピーする(復元する)
  ユーザー データベースをオンライン バックアップで取得している場合は、SQL Server の起動後に、該当データベースを復元する
 - 新規サーバーの SQL Server を起動する
 - レジストリに格納されている情報を再設定する(TCP ポート番号や起動時パラメーターでのトレースフラグ設定などのうち、旧マスターで設定を変更しているものがある場合はそれらを再設定する)
 - OS の設定で、旧マスターで変更しているものがある場合は、それらを再設定する
  (フォルダー構成や、NTFS アクセス許可、ユーザーの権利、共有フォルダーなど)

以上で旧マスターとまったく同じ環境を丸ごと新規サーバー上で動作させることができます。

2.アップグレード アドバイザーによる事前チェックを行う

3.SQL Server 2014 へのアップグレード要件を確認する(アップグレード可能な Service Pack や .NET Framework 3.5 SP1PowerShell 2.0 など)

4.新規サーバーSQL Server 2014 へアップグレードする

5.SQL Server 2014 最新の修正プログラム(CU や Service Pack など)をインストールする

6.統計(Statistics)を更新する

7.データベースの互換性レベル120 へ上げる(オプション)

8.BIDS(Business Intelligence Development Studio)を利用している場合は、SSDT-BI(SQL Server Data Tools - Business Intelligence for Visual Studio)をインストールする(オプション)

作業のポイントは、ハードウェア リプレース時の新規サーバーへの完全複製です。旧マスターと同じ名前のサーバーを作成すること、同じ Active Directory ドメインに参加していること、旧マスターの SQL Server と同じパスにインストールすること、同じ名前のインスタンス名にすること、同じサービス アカウントを利用すること(サービス アカウントはドメイン ユーザーであること)、同じ種類の修正プログラムを適用すること、同じフォルダー構成/NTFS アクセス許可にすることなどを守っていれば、問題が起こることはありません(弊社のお客様では、問題なく動作しています)。

唯一の問題は、Windows のローカル ユーザーを利用している場合ですが、この場合はいくつかのものが動作しなくなりますが、データベースとジョブについては、所有者を設定することで正常に動作するようになります。ログイン アカウントについては、スクリプト生成ウィザードでスクリプト化を行っておくことで再設定を容易に行えます。

Windows のローカル ユーザーの問題は、(旧マスターで)Management Studio を Windows のローカル ユーザーで操作していることに起因するので、今後のことを考慮すると、Management Studio を利用するときは、Active Directory のドメイン ユーザーで操作することを強くお勧めします。


Note: サービス アカウントが同じドメイン ユーザーではない場合
このケースでは、SQL Server サービスのサービス アカウントが、旧マスターと新規サーバーで同一のドメイン ユーザーであることが条件でしたが、これは各種の暗号化に関わるサービス マスター キーが関係しています。サービス マスター キーは、SQL Server のセットアップ時にサービス アカウントに紐付いて作成されるので、旧マスターと新規サーバーで同じサービス アカウントを利用することで、共通のサービス マスター キーを利用できるようになります。
サービス マスター キーは、リンク サーバーのセキュリティ設定(リモート ログインのパスワードなど)や、データベース メールでのメール サーバーへのログイン パスワード、TDE(透過的なデータ暗号化)で利用するデータベース マスター キーなどで利用され、(内部的なデータを含めた)各種のデータを暗号化するための最も重要なキーになります。
このため、サービス アカウントが同じドメイン ユーザーではない場合は(Windows のローカル ユーザーなどをサービス アカウントにしている場合は)、リンク サーバーや、データベース メール、TDE などが、新規サーバー側で動作しないということになります。サービス マスター キーが原因で、うまく動作しない場合には、次のように「暗号化解除中にエラーが発生しました」エラーが発生します。
00324
これを回避するには、サービス マスター キーを作成し直します(REGENERATE します)。作成し直しは、次のように ALTER SERVICE MASTER KEY ステートメントを実行します。

USE master
ALTER SERVICE MASTER KEY REGENERATE

このステートメントを実行しても、「暗号化解除中にエラーが発生しました」エラーが発生する場合には、次のように FORCE(強制)オプションを付けて、作成し直します。

USE master
ALTER SERVICE MASTER KEY FORCE REGENERATE

ただし、このように、FORCE を利用した場合は、暗号設定が失われる可能性があるので、暗号化が関連する機能(リンク サーバーのセキュリティ設定やデータベース メールでのメールサーバーへのログイン情報など)の再設定が必要になる場合があります。TDE を利用している場合には、データベース マスター キーや証明書のバックアップが必要になる、あるいは再設定が必要になる場合があります。
したがって、サービス アカウントは、同一のドメイン ユーザーを利用するようにすることが重要になります。サービス アカウントが同一のドメイン ユーザーであれば、こういった問題は発生しません。もし、サービス アカウントに Windows のローカル ユーザーを利用している場合は、第5章で説明するリンク サーバーやデータベース メールのスクリプト化の手順を利用して、旧マスター側で設定をスクリプト化しておくことをお勧めします(これで再設定が容易になります)。

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